第57回 東京ダービー(S1)

【予想】
◎クラーベセクレタ
○シングンボス
▲キスミープリンス
△ヴェガス
△ジャクソンライヒ
△ゴールドスガ
△ブラックサンダー

 転入後4連勝がいずれもワンサイドのクラーベセクレタ。しかも一戦毎に強さ倍増で、時計的にも例年のレベルを凌駕。折り合い自在で距離延長も不問なら不動の◎。相手には羽田盃2着のシングンボスを重視で、間違いなく距離が延びていいタイプ。

【レース】
 戸崎クラーベセクレタは好スタートを決めて、相手なりに対応の構え。注文をつけてハナに行ったのが中野エースフォンテン。本橋ジャクソンライヒ、吉原ナターレと外枠3頭が先行して、クラーベセクレタは2番手グループの一角。的場文キスミープリンスは中団のインで、御神本シングンボス、酒井ヴェガスは例によって後方から。前半3ハロンは過去5年のダービーで最速の34秒8。途中からペースダウンして団子状態になったところを見計らってスパートをかけたのが石崎駿ファジュル。その後ろからヴェガスも進出。目まぐるしくポジションが入れ替わりましたが、落ち着いて対処した戸崎クラーベセクレタがゴール1ハロン手前で先頭。食い下がるヴェガスを1馬身抑えて2冠を達成しました。内から外に立て直して差を詰めたキスミープリンスが3着。

【上位馬の寸評】
1着 クラーベセクレタ
 羽田盃で完全に勝負付けが済んだメンバー。東京湾C組にもそれほど骨っぽい相手はおらず、3冠目のジャパンダートダービーに向けて、どういう勝ちっぷりを見せるかのみが焦点でした。この日はマイナス9キロの456キロ。決して細目感はなく適度な気合乗り。上積みはなくとも羽田盃のデキは維持していると判断。レースは好スタートから戸崎騎手が両サイドの動向を窺い、相手なりに対応の構え。外枠先行の3頭を行かせて2番手グループの一角ですが、走りのリズムは今イチ。外目4番手でようやく落ち着いたところに、ファジュルの出し抜けを食わすようなマクりに遭い、一瞬後手に。ただし戸崎騎手が冷静に対処して4コーナーで先頭に並びかける形。ゴール1ハロン手前でファジュルを交わし、猛追するヴェガスを1馬身抑えて見事に2冠を達成しました。時計は予想よりかかったものの、厳しい流れを凌いだ点に価値。3冠目のジャパンダートダービーへのステップとしては得がたい経験になりました。問題は馬体減で目イチの競馬をした反動。これ以上減ってくるとマイナスポイントがつきます。

2着 ヴェガス
 デビューから2連勝後は勝ち星から遠ざかっていますが、クラウンC2着、羽田盃3着と世代屈指の実力をアピール。ただし乗り難しいというか荒削りなレースぶりが目立ち、多頭数の競馬では信頼し切れない面も。この日はマイナス4キロの489キロ。相変わらず馬っぷり上々だし、以前に比べるとキビキビ感が出てきました。レースは例によってヤンワリ出て前半は折り合いに専念。殿りから進み、3コーナー手前からファジュルのスパートに合わせるように進出。4コーナーでは先行グループの直後にまで接近。直線もジワジワ脚を伸ばしましたが、最後はクラーベセクレタと同じ脚になり2着。それでも息の長い末脚を駆使するこの馬の持ち味を生かしたレース内容でした。まだ全幅の信頼は置きかねるものの、多少時計のかかるパワー勝負ではかなりの力を発揮します。流れ如何ではジャパンダートダービーでも善戦可能。

3着 キスミープリンス
 前走の羽田盃は、直前の手替わりに加えて大外枠も響いて不本意な結果に終わった同馬。悲願のダービー制覇に燃える的場文騎手を鞍上に迎えて仕切り直しの一戦。この日はマイナス1キロの453キロ。いつにも増してテンションが上がり気味でしたが、体をフックラ見せて気配としては悪くありませんでした、レースは的場文騎手が気合をつけて内7番手から。序盤のペースからすれば納得のポジションですが、途中でペースダウンしたところからマクり合戦になり、行き場のない内でポジションを下げる破目に。最後の直線でようやく外に切り替えて差を詰めてきましたが、3着に終わりました。的場文騎手としてはちょっと悔いの残る競馬だったのでは。スムーズに運んでいれば、勝つまではともかく2着はあった。

4着 オーゴンヒリツ
 前走の東京プリンセス賞は、13頭立て13番枠から2番手に行って惜しい2着。今年の牝馬のレベルを考えると気になる存在ですが、ガサのない牝馬に男馬相手の二千は? 気にはなりつつも印はつけませんでした。この日はプラス1キロの433キロ。ハードな追い切りを消化して体が減らなかったあたり、体質が強化されたようです。レースは出たなりで外11番手から。勝負処から流れに乗ってポジションを上げ、直線の入口では手応え良く5番手まで進出。アワヤと思わせましたが、あと一歩の伸びを欠いて4着に終わりました。流れが向いたにせよ上々のレース内容で、見た目以上の底力。相手なりに走るタイプで距離の許容範囲も広い。今後も目が離せない存在。

5着 ファジュル
 レースを盛り上げた最大の立役者がこの馬です。よもや大本命馬と同じ厩舎の馬が、レースをかく乱する役割を果たそうとは…。この日はマイナス4キロの488キロ。クラシックレースで活躍した兄ディラクエに似た好馬体は相変わらず。馬っぷりだけならメンバー屈指ですが、近2戦の走りからは正直印はつけ切れませんでした。レースはスタートひと息で後方12番手から。残り800の地点で外に持ち出すと、叩いてマクって出て3、4コーナーでは一気に先頭に踊り出る勢い。最後の直線も内で懸命に粘っていましたが、力及ばず5着に終わりました。追ってから鋭い脚を使える馬ではないので、先に行くか、こういった力任せの早マクりが好走パターンか。それにしても石崎駿騎手は油断なりません。

6着 ナターレ
 勝ったクラーベセクレタはもとより、4着オーゴンヒリツ、そして6着のこの馬と、牝馬がいい走りを見せました。レースは吉原騎手が強気の先行策で3番手からの競馬。3コーナー過ぎにファジュルにマクられたものの、気力は途切れず盛り返して4コーナーでは再びファジュルを交わす勢い。結局は6着ですが、逃げたエースフォンテンが殿り16着、2番手ジャクソンライヒが14着を考えると、一緒になって先行して勝ち馬から1秒差の6着は上等。前走の東京プリンセス賞で株を下げましたが、どうやらこの馬は揉まれない外枠の方が競馬がしやすそうです。この日はプラス2キロの461キロ。丸味を帯びた体つきで、好調キープ。

9着 ダブルオーセブン
 南関東で使ったのは浦和のニューイヤーC(7着)のみ。最近はJRAの芝路線で馴染みは薄いものの、JRA1勝を含め3勝の実績。川島正行ブランドに加えて鞍上岩田、クラーベセクレタと未対戦。つまり未知数の部分もあり、穴人気に推されました。この日はプラス2キロの482キロ。この厩舎の馬にしては割とスッキリした体つきの馬で、一見して芝向きの印象。レースは岩田騎手が気合をつけて行ったものの10番手から。特にポジションを上げるでもなく、見せ場らしい見せ場がなく9着。距離ももう少し短い方がいいのか…。人気に見合う信頼性は? 。

10着 シングンボス
 全兄ロイヤルボスは、最強世代の東京ダービーで、アンパサンド、フリオーソに0秒1差の3着。その兄以上に均整の取れた好馬体を誇る同馬。羽田盃2着に本格化の兆しが窺え、ここは大きく注目していました。この日はマイナス1キロの481キロ。羽田盃当時と同等の気配で状態は文句なし。レースは出たなりで後方13番手から。この程度は織り込み済みですが、ファジュル、ヴェガスとは対照的に、勝負処でまるで反応せず置かれたまま。全く見せ場がありませんでした。走る方に気が向かなかったということでしょうか。もう少し長い目で見たい。

14着 ジャクソンライヒ
 別路線の東京湾Cで逃げ切り勝ちを収めた同馬。馬体から大物感はありませんが、楽に逃げられればソコソコ粘る可能性ありとみていました。今回も計量不能ですが、案外落ち着いていたし、馬体もキープしている印象。レースは中野エースフォンテンの強気の逃げに押されて2番手からの競馬。3コーナー手前からのマクり合戦の前に、あえなく沈没しました。やはりスンナリ逃げてこその馬。距離の二千も長そうです。